Vol. 2 日本茶はどのようにしてできる? 畑から湯呑みまで―蒸し製緑茶の工程

Vol. 2 日本茶はどのようにしてできる? 畑から湯呑みまで―蒸し製緑茶の工程

私たちが日常のひとときに手にする一杯の日本茶。その爽やかな香りや澄んだ味わいは、実は長い時間と丁寧な手仕事の積み重ねから生まれています。ここでは、日本茶の主流である「蒸し製緑茶」が、畑から湯呑みに届くまでの流れを辿ってみましょう。

 

 

茶畑での栽培

日本茶の原料である茶の木は、ツバキ科の常緑樹「チャノキ」です。全国各地で育てられていますが、特に鹿児島、静岡、京都などが有名な産地です。茶畑は刈り揃えられた低い緑のじゅうたんのように広がり、四季を通じて手入れが欠かせません。肥料や土の状態を整え、害虫や病気を防ぎながら、新芽が春にすくすく伸びるよう見守ります。

 

 

新茶の季節と収穫

お茶づくりのクライマックスは、やはり春の収穫です。4月下旬から5月にかけて芽吹く一番茶は、とくに香り高く、滋味に富みます。摘み取るのは、柔らかい新芽とその下の若い葉。昔は手摘みが主流でしたが、今では機械摘みも一般的です。それでも「一芯二葉」といって、芽と若葉を選んで摘むことで、茶葉の質が決まってきます。


 

蒸すという日本独自の技術

摘んだばかりの葉は、そのままではすぐに酸化してしまい、紅茶や烏龍茶のように色や風味が変化してしまいます。そこで日本茶では、収穫後すぐに「蒸す」という工程を行います。高温の蒸気で20秒ほど加熱することで酸化を止め、鮮やかな緑色と清涼感ある香りを閉じ込めるのです。この「蒸し」が、日本茶の最大の特徴といえるでしょう。

 

揉みと乾燥

蒸された葉はまだ水分を多く含んでいるため、そのままでは保存できません。そこで行われるのが「揉み」と「乾燥」です。茶葉をやさしく揉みほぐすことで細長い形に整え、同時に内部の水分を均一に抜いていきます。さらに熱風で乾燥させることで、香りが立ち、保存性も高まります。この一連の流れを経てできるものを「荒茶(あらちゃ)」と呼びます。

 仕上げと選別

荒茶はまだ仕上げ前の段階。ここから茎や粉を取り除き、葉の大きさを揃え、焙煎(ほいり)を加えて香りを引き立てます。こうしてようやく、私たちが店頭で目にする「仕上げ茶」として完成するのです。仕上げの度合いによっても味わいは変わり、火香(ひか)と呼ばれる香ばしさが強調されたお茶は、どこかほっとする風味を持ちます。

 湯呑みに届くまで

完成した茶葉は袋詰めされ、流通を経て、私たちのもとへやってきます。淹れる人の手によって湯加減や抽出時間が調整され、一杯のお茶となるとき、茶畑での春風や職人の手仕事が、その湯気の中に息づいているのです。


一見すると当たり前の存在に思える日本茶ですが、その裏には自然との対話、科学的な工夫、そして人の技が凝縮されています。茶葉が湯呑みに注がれるまでの道のりを想像しながら味わえば、日常のお茶の時間が少し特別なものに感じられるかもしれません。

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