Vol. 3 日本茶の種類 奥深い一杯の世界
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私たちが普段飲んでいる日本茶。その種類は実にさまざまです。茶葉はすべて**同じ「チャノキ」**から作られますが、栽培方法や製造工程の工夫によって、香りも味わいもまったく違った表情を見せてくれます。今日は、日本茶の代表的な種類を整理してみましょう。

日本茶の基本は「蒸製緑茶」
日本茶には大きく分けて不発酵茶(緑茶)・半発酵茶(ウーロン茶)・発酵茶(紅茶)の3種類があります。緑茶には蒸して作る「蒸性緑茶」と「釜炒り緑茶」がありますが、日本茶の基本は煎茶を代表とする、蒸し性の緑茶です。摘み取った茶葉をすぐに蒸して酸化を止めることにより、鮮やかな緑色と爽やかな香りが保たれます。
蒸製緑茶の種類
煎茶(せんちゃ)
最も一般的な日本茶で、生産量の約7割を占めます。茶葉を蒸す時間によって、浅蒸し、中蒸し、深蒸し煎茶に分けられ、色味や味わいが大きく異なります。浅蒸しはにごりのない美しい色でさらりとした飲み口に、深蒸しは生葉の蒸し時間を2倍~3倍長くすることで渋味が抑えられ、色も味わいも濃厚になります。
玉露(ぎょくろ)
玉露の特長は、覆下栽培と呼ばれる独特かつ丁寧な栽培による濃厚なうま味と甘みです。
一番茶の新芽が育ちはじめる20日間程度、茶園を藁や黒い幕で覆い、日光を遮断することで、うま味成分であるテアニンを蓄えます。「お茶の王様」と呼ばれる高級茶で、とろりと濃厚な口当たりのほか、海苔を思わせる「覆い香(おおいか)」が特徴です。
かぶせ茶
一番茶の茶摘み前に7日程、茶樹を布などで覆って栽培した生葉(なまは)を使い、煎茶と同じ工程で製造。ぬるめのお湯で時間をかけて淹れれば玉露のような上品な味に、熱めのお湯で淹れれば渋味の残る煎茶のような味わいを愉しめます。
抹茶(まっちゃ)
玉露と同じ覆い下栽培の碾茶と呼ばれる茶葉を揉まずに乾かし、石臼で挽いたもの。茶道のように、茶筅でたてて飲む抹茶は、渋味の中に上品な旨みが広がる味わいが特徴です。日本茶の栄養素を丸ごと摂取でき、ラテやスイーツなどにも広く活躍しています。
香ばしさを楽しむお茶
ほうじ茶
煎茶や番茶を強火で褐色になるまで炒って作ります。焙煎することで生まれる香ばしい香りとあっさりした味わいで、カフェインも少なめ。刺激が少ないので、夜の飲用や子どもにも安心。
玄米茶
煎茶や番茶に炒った玄米を加えたお茶。香ばしいお米の風味が食事後にもぴったりです。番茶と組み合わせるのが主流ですが、煎茶とブレンドしたものや、抹茶入りのものなどもあり、ブレンド次第で味わいが変わります。
地域色豊かなバリエーション
番茶
晩夏以降に摘んだ大きな葉を使ったお茶で、あっさりとした味わい。関西を中心に日常茶として親しまれています。
深蒸し茶
蒸し時間を長くして仕上げることで、渋みがやわらぎ、濃厚でまろやかな味わいに。静岡や掛川が有名です。
茎茶(棒茶)
茎の部分を使ったお茶で、甘みと爽やかな香りが特徴。加賀棒茶など、地域ブランドとしても知られます。
蒸製緑茶以外の日本茶
釜炒り茶
九州を中心に作られるお茶で、蒸さずに釜で炒って酸化を止めるのが特徴。中国茶の技法にルーツがあり、独特の香ばしい「釜香(かまか)」が魅力です。
日本産ウーロン茶
近年、鹿児島や静岡などで作られ始めた半発酵茶。中国や台湾のウーロン茶に比べて軽やかで、緑茶に近い柔らかな風味を持ちます。
和紅茶(わこうちゃ)
明治期に紅茶作りが導入され、現在は全国各地で再評価されています。渋みが穏やかでまろやかな甘みがあり、外国産紅茶とは一味違うやさしい風味が魅力です。
生活シーンでの楽しみかた
朝の一杯:爽やかな煎茶で目を覚ましましょう
昼下がり:玉露や抹茶で一息
夜の食後:カフェイン控えめのほうじ茶でリラックス
休日には:釜炒り茶や和紅茶で気分を変えてみる
一日の流れや気分に合わせて選ぶと、お茶の時間がぐっと豊かになります。
まとめ
日本茶は蒸し方の違いだけではなく、炒ったり発酵させたりと幅広く進化し続けています。どれも同じチャノキから生まれながら、製法によって味も香りも異なる。その奥深さを知ると、普段の一杯がぐっと楽しくなりますね。ぜひ次に茶葉を選ぶときは、「今日はどんなお茶にしよう」と気分に合わせて選んでみてください。